大判例

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東京地方裁判所 昭和58年(ワ)255号

原告

木村茂雄

右訴訟代理人弁護士

湯沢誠

高橋理一郎

被告

山武ハネウエル株式会社

右代表者代表取締役

沖信春男

右訴訟代理人弁護士

中村誠一

角山一俊

右中村誠一訴訟復代理人弁護士

臼井義眞

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

一  当事者の求める裁判

(一)  原告の請求の趣旨

1  原告が被告に対し、雇用契約上の権利を有することを確認する。

2  被告は原告に対し、金五四万六九七八円及び昭和五六年一〇月以降毎月二五日限り金二三万八一五〇円、昭和五七年以降毎年六月三〇日限り金六四万二三〇〇円、一二月五日限り金六三万二三〇円の金員を支払え。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  第2項につき仮執行の宣言

(二)  請求の趣旨に対する被告の答弁

主文と同旨

二  当事者の主張

(一)  原告の請求の原因

1  被告は、各種産業用プラント(鉄鋼・石油精製・石油化学・化学工業等)のプロセス制御等に使用される工業計器・自動調節弁・制御システム、大規模ビル等の空調用制御機器システム、燃焼用制御機器、電子機器等の製造・販売等を業とする従業員約三四〇〇名の株式会社であり、原告は、昭和三二年五月一日被告会社に雇用され、以来工業計器及びその部品の調整・組立等の業務に従事してきたものである。

2  被告会社は原告に対し、昭和五六年八月四日、原告に就業規則五六条六号(会社の業務に協力せず業務の遂行を妨げたとき)、七号(故意または重大な過失により会社に損害を与えたとき)、八号(上司の命令に不当に反抗したとき)該当の懲戒解雇事由ありとして原告を懲戒解雇する旨の意思表示をした。

3  しかし、被告会社のなした右懲戒解雇の意思表示は、就業規則該当事由がないか、又は懲戒解雇を相当とする事由がないのになされたもので、懲戒解雇権の濫用として無効である。

4  原告の本件解雇時における月額賃金は金二三万八一五〇円で、当月一日から末日までの分を毎月二五日限り支払うとの定めになっていた。

5  また、原告の夏季手当は毎年六月三〇日に、年末手当は毎年一二月五日に支給されることになっているが、原告が昭和五六年一二月以降に支給を受けるべき夏季手当は金六四万二三〇〇円を、年末手当は金六三万二三〇円を下ることはない。

6  よって、原告は被告に対し、原告が雇用契約上の権利を有することの確認と、昭和五六年九月分賃金金二三万八一五〇円から既に支払を受けた金三万六八一二円を控除した同月分賃金残額金二〇万一三三八円及び同年度年末手当金六三万二三〇円から既に支払を受けた金二八万四五九〇円を控除した同年度年末手当残額金三四万五六四〇円の合計金五四万六九七八円、昭和五六年一〇月以降毎月二五日限り月額金二三万八一五〇円の賃金、昭和五七年以降、毎年六月三〇日限り年額金六四万二三〇〇円の夏季手当、毎年一二月五日限り年額金六三万二三〇円の年末手当の各支払を求める。

(二)  請求の原因に対する被告の認否及び主張

(認否)

1 請求の原因1、2の事実は認める。

2 同3は争う。

3 同4の事実は認める。

4 同5の事実は否認する。

(主張)

1 本件懲戒解雇に至る経緯

(1) 原告は、昭和四九年ころ、被告会社の製品である差圧発信器の調整等の業務に従事していたが、その調整にかかる発信器は差圧不良で、他の従業員が調整をやり直さなければならないような状況であり、また、昭和五一年春ころから職場内において粗暴な言動や脅迫的な言辞等異常な態度がしばしば見られるようになり、職場内で頻繁に強い苦情が訴えられるようになった。被告会社は、その度ごとに上司を通じて原告に指導、注意を繰り返したが、一向に改善の兆しはなく、そのため、社内でその改善策を十分に検討し、原告本人及びその家族とも十分協議したうえ、昭和五一年七月から当分休養のため欠勤扱いとすることにした。

(2) 原告は、昭和五二年一月五日職場に復帰し、客先記号の彫刻、計器ネームプレートのタイプライター打刻等の作業に当たることになったが、依然として居眠りが多く、作業能率も著しく低く、これを注意する上司に激しく反抗し、職場秩序を著しく破壊した。

例えば、同年八月ころ、居眠りが続くので上司が注意をすると、原告は「眠っているのではなく考えていた。」と大声を出して上司を睨み返した。また、昭和五四年八月一〇日ころ、原告は客先記号の彫刻作業に当たっていたが、一日当たりの通常の処理量が約二六〇枚のところ、原告の処理量は一日七、八〇枚にすぎなかったので、上司がせめて一日一四〇枚位は処理するよう指示すると、「そんなにあおったってできないものはできない。」と激しく反抗した。同年九月一七日、上司に作業中荷物を持つことを命じられた原告は、「重いものは持たない。客先記号ネームプレートボルトの亜鉛ペト塗りだけしかやらない。」などと言ってこれに応ぜず、円滑な作業の進行を妨げた。昭和五五年四月一四日、上司が当日の作業としてボルト亜鉛ペト塗り作業を依頼したところ、原告は「俺は二二年も勤めているのに職級が上らない。仕事なんか適当にやればいいと思っている。半分も力を出せば十分だ。」などと言って容易に作業に着手しなかった。また、同年一〇月二日、検査係から原告の作業ミスの指摘を受けた上司が原告に不良部分の組み替えを指示したところ、原告は、自己の非を認めず、大声をあげて反抗的態度を示した。更に、昭和五六年三月二七日、電子ビーム溶接室のヘリウムテストに従事中の原告がテストの都度他の職員に手順や治具を聞くので作業が妨害されているとの苦情を受けた上司が原告に対し、「使い方を忘れるなら一回作業したものは使用方法をノートに記入しておき、再度作業するときにそのノートを見て作業するように。」と穏やかに話したところ、原告は、「そんなことは必要ない。一回教われば覚えるので、ノートには書かない。」などと言って上司に大声でくってかかる等して反抗し、その間職場における作業の進行に支障を生じさせた。そこで、上司は、就業規則を取り出し、「社員は上司の指示命令に従い、業務の遂行に最善を尽くさなければならない。」との服務規律条項を読み聞かせて注意を促したが、原告はこれを全く無視する態度を示した。

(3) クロスリークテスト中のKDI22(差圧発信器)をチェックしていた被告会社従業員は、昭和五六年四月一四日、セコニックメーター二台にヒビが入っているのを発見した。このときはその原因を究明することができなかったが、同年五月八日、職場内でクロスリークテスト中のKDI22が横倒しになったり、ひっくり返されたりし、三台のセコニックメーターが損傷を受けているのが発見され、その現場の状況等からすると、右損壊等は故意になされたものと見ざるを得ないものであった。そこで、被告会社は、検査過程で製品が故意に損壊されたことを重視し、職場をあげて損壊事件に対処することとした。被告会社は、同月一二日朝のミーティングにおいて、第四製造課第一係全員にセコニックメーター損壊事件を報告し、不審者に十分注意するよう呼びかけ、同月一八日の各班ごとのミーティングにおいても、これまでの損壊事件の報告と注意の呼びかけを行った。原告は、右いずれのミーティングにも出席していた。

(4) 同年六月初旬、原告が組付けたND22のボディのドレインプラグと盲プラグが緩んでいるのに気づいた同僚が原告に対し、努めて穏やかに「ドレインプラグと盲プラグが四、五台緩んでいるので、気をつけて組んでくれませんか。」と言ったところ、原告は一気に興奮し、大声で「俺が組んだんじゃねえ。知らねえ。」と怒鳴るなどして手がつけられなくなり、結局、右同僚がその締め直しをせざるを得なかった。また、同月一七日、原告の直属上司からその上司に対し、原告がヘリウムテスト室の壁に穴をあけて窓を作るよう大声で執拗に迫るので苦慮しているとの訴えがあったので、右上司が原告に急に窓を作れと言われても直ちにできるわけではない旨を約一時間にわたり種々説明したが、原告は窓を作れと執拗にくい下り、その間、職場における他の従業員の作業が中断、妨害された。

(5) 同年同月一八日、前日に搬入されて第三事務所出入口付近に置いてあった現場型指示調節計三台の指針が中央部から約一二〇度折り曲げられ、配管用ゴムチューブが二本とも切断され、スケール板の中央部がドライバー状のもので突かれて凹んでいるのが発見された。被告会社において、右計器の搬入経路、破損状態、現場の状況などの調査を綿密に行ったところ、右事故は搬入までに生じたものではなく、搬入後現場において故意に損壊されたものであることが明らかになった。そして、翌一九日、前日損壊された計器二台のベローズ部分に前日は存在しなかったドライバー状のものによる突き傷が付いているのが発見され、調査の結果、右の傷は一八日午後二時ころから一九日午前九時三〇分ころまでの間に何者かにより故意に付けられたものであることが明らかになった。

以上のようなことから、被告会社は、前記の各損壊事件は全社的な製品の品質管理体制への挑戦行為で、損壊による直接の時間的、費用的損害が生ずることはもとより、納期の遅れ、重大事故発生の危険もあり、会社の存亡にもかかわりかねないものと判断し、損壊事件の再発防止に全力をあげることになった。そこで、被告会社においては、同月二三日、二四日の両日各職場において、職制が全従業員に損壊事件の経緯及び重大性を説明し、各人の注意を喚起して損壊事件の再発防止を呼びかけた。原告は、この会合にも出席していたものである。

(6) ところが、被告会社が損壊事件の再発防止のため次の具体策を検討中であった同月二五日、検査係のカウンター上に置かれてあった差圧発信器のタンタル製ダイヤフラムがレンチようのもので強く突かれ、損傷を受けているのが発見された。ことここに至って、被告会社は、従業員による社内の巡回を実施せざるを得ないものと判断し、翌二六日から右巡回を実施することとした。

2 原告の上司に対する反抗及び職場秩序破壊行為

(1) 原告は、差圧発信器のヘッド組付作業に従事中の昭和五六年六月二二日、グリスを塗布してはならないところにグリスを塗布し、これを注意した同僚の声に耳を貸さず、これに大声でくってかかるなどし、そのためその間付近の従業員の作業を中断させた。

(2) また、原告は、同年七月六日、急ぎの作業が入ったので上司に一時作業変更を命じられたところ、これに大声で反抗して従わず、そのため上司がやむなく原告が命じられた作業をせざるを得なかったが、その間原告は何の作業も行わなかった。そこで、他の上司が原告に注意を与えたところ、原告は激昂して右上司にくってかかるなど手がつけられない状態になり、かけつけた別の上司にも反抗的態度に終始し、作業への協力姿勢は全く見られなかった。右上司は、やむなく就業規則を取り出し、服務規律の条項を読み聞かせて厳重な注意を与えたが、右混乱の続く間、関係者及び付近の従業員の作業は中断させられた。

(3) 更に、原告は、同月八日、自己が作業中の工具の使用について直属上司を大声で難詰、威嚇し、その場をおさめようと集った他の上司に対しても、「関係ないからどいていろ」と怒鳴り散らすなどし、大声をあげながらトルクレンチで荷台を五、六回叩くなど異常興奮状態となり、その後一時平静に戻ったものの、やがて突如通箱を床に叩きつけ、前記上司らを呼びつけるなどし、他の上司が場所を変えるよう説得するのにも耳を貸さず、その間職場を混乱に陥れ、作業の進行を妨害するなどした。

3 原告のメーター損壊行為

被告会社においては、相次ぐ製品損壊事件に対し、前記のように全社をあげてその再発防止に努めていたのであるが、その最中原告による本件メーター損壊事件が敢行された。即ち、昭和五六年七月一三日の早朝、損壊事件防止のため待機していた製造課員二名は、何者かがロッカー室へ入って着替えをしたのち通路を歩いて行き、次いでバンバンと物の割れる音がし、その後何者かが出て行く足音を聞いたので、急ぎ音のした方へ行ってみると、セコニックメーター二台の透明プラスチック表示部分が壊されているのを発見した。そこで、右二名は付近にいた原告を呼び止め、原告が損壊したのか否かを尋ねると、原告は、「やったよ。おもしろくないからだ。逃げやしないよ。いつでも話はしてやる。」と睨みつけるように答えた。次いで、同日午前一一時一〇分ころ、被告会社が原告本人から事情聴取をしたところ、原告は、腕組みをして胸を張り、そっくり返るような態度で、「日頃おもしろくないからやった。足で蹴りましたよ。」などと答え、被告会社からおもしろくないと今後もやるのかと聞かれると、「そんなこと分りませんね。」と答え、反省の色を全く見せない状態であるのみならず、再度事件を起こしかねないような姿勢を示した。そして、原告は、被告会社から右の点を叱責されると、「反省の色ってどんな色ですか。」と嘯き、七月一三日以外の損壊事件の関与の有無を尋ねられると、「見つからなかったものを自分から進んで認めるわけがないだろう。」と答える始末であった。被告会社は、同日夕刻、原告に対する慎重な対応策を検討すべく原告に自宅待機を命じたが、原告は、翌一四日の退社時に会社付近を人待ち顔でウロついたり、その後も同様の行為を繰り返したりしていた。

4 本件懲戒解雇の正当性

(1) 原告が損壊したセコニックメーター二台は、いずれも差圧発信器に備えつけ、石油化学プラントのアセチレンガスの圧力指示調節及び石油プラントの流量指示発信器として使用される予定であったが、もし圧力検出半導体センサー及びセコニックメーターの後ろ側にある高集積度プリント板上の電子部品に強い衝撃が加わると、これが電気的、機械的に損傷を受け、これに気づかず出荷、稼動させると、制御グループに異常な外乱を与え、パイプラインや各種機器からアセチレンガスが漏れて引火、爆発し、エチレンの混合比が変わることにより不良品が製造され、圧力上昇によりアラームが出てその原因究明に手間取り、系が乱れて生産上多大な支障を受け、製造量異常記録による生産管理上の重大な支障が生ずるおそれがある。また、セコニックメーターの実目盛盤に損傷が及んだ場合には、右目盛盤は特注品であるところから製品の納期遅れを招来し、海外プラントを対象とする被告会社の著しい信用失墜につながるおそれがある。本件においては、被告会社は、幸い実目盛盤の損傷までに至らなかったので、常備在庫のセコニックメーターボディに実目盛盤を付け替え、圧力検出半導体センサー及び高集積度プリント板上の電子部品につき再度慎重な機能テストを実施したうえで製品の出荷をしたので、たまたま右のようなおそれが現実化しなかったものであるにすぎない。

(2) 被告会社の製品が前記のようなものであるところから、被告会社においては製造過程における品質及び安全性の確保を重要視し、超高度の品質管理体制を確立し、プロセス管理による不良品の撲滅を目指している。しかし、右の品質管理体制は、故意による製品損壊の事態は全く予想しておらず、意図的な製品損壊行為が行われるならば、予想外の欠陥製品が出荷され、被告会社の対外的信用が壊滅的打撃を受ける可能性がある。原告のなした本件製品損壊行為は、故意によるものであって、被告会社の右のような品質管理についての努力を無意味ならしめるものである。その意味で、原告の右行為は、被告会社の対外的信用を害するおそれがあったのみならず、被告会社の品質管理体制に対する挑戦行為ともいうべきものであり、企業の社会的責任を宣言した昭和五三年六月の「生産性労使共同宣言」に対する挑戦行為でもある。

(3) のみならず、原告の本件製品損壊行為は、昭和五六年四月一四日以来五回にわたり被告会社内において連続発生していた製品損壊事件につき、被告会社がミーティングを通じて再三従業員の注意喚起と再発防止を呼びかけ、職場をあげて再発防止の努力を続けている最中に、右のような事情を熟知しながら、面白くないからという単純な動機から故意に敢行されたものであり、原告は、その後真摯な反省の態度を示すようなことは全くなく、再度破壊行為に及ぶ可能性さえ窺われたのであって、その職場破壊行為は極めて悪質かつ重大なものであったというべきである。

(4) 更に、原告の勤務状況は、前記のとおり最低の一語に尽き、その作業能率が常に通常の二分の一ないし三分の一であるうえ、上司の命令に従わず、大声でくってかかるなど反抗的態度に終始し、同僚に対しては度々喧噪行為に及び、右のような勤務状況は、上司らの度重る厳重な注意にもかかわらず一向に改善される兆しがなかった。のみならず、原告の職場における喧噪行為はむしろ激化傾向にあったもので、これによる職場環境、秩序の悪化、作業停滞、職場の士気の低下等による損害には重大なものがあり、原告の本件製品損壊行為時ころには、もはや容認し難い程度に達していた。原告の上司や同僚からは原告の配転を望む訴えがしばしば出されたが、被告会社としては、原告の能力の関係上配転はできず、また、原告の反省心、更生意欲の欠如から企業内でその改善を図ることは限界に達していた。

(5) 以上のようなわけで、被告会社は、原告の処遇につき慎重な検討を加えた結果、企業の危機を救済し、その存続を図るためには、原告を懲戒解雇するのもやむを得ないものと判断し、原告所属の労働組合の同意を得たうえで、原告を懲戒解雇したものであり、原告の前記行為が就業規則五六条六号ないし八号に該当すること、原告に対する本件懲戒解雇が権利の濫用に当たらないことは明らかである。

(三)  被告の主張に対する原告の認否及び反論

1  被告の主張1はすべて争う。

(1) 原告が調整した差圧発信器の調整し直しを他の従業員がしたこともあるが、それは原告が該職場に移った当初のことで、作業に慣れるに従いそのようなことはなくなった。原告は、生真面目な性格から、禁煙ポスターを無視して喫煙する者や職場体操を怠る者に注意を与えたことはあるが、職場内で粗暴かつ脅迫的な言動をしたようなことはない。また、原告が休職するに至ったのは、原告の自律神経失調症も一因ではあるが、主因は被告会社が原告の兄弟を呼びつけ、強制的に休職に応じさせたことによるものである。

(2) 原告が職場復帰後タイプライター打刻作業に従事するようになった当初は、作業手順の不明などから作業能率も低かったであろうが、次第に他の者と同程度の能率はあげるようになった。客先記号の彫刻は、一日七、八〇枚が平均的作業量で、原告がそれ以上の作業量をこなすよう指示を受けたことはないし、もし原告の作業能率が被告主張の如く劣悪だとするなら、なぜ四年間も原告にタイプライター打刻作業を続けさせたのであろうか。また、原告が上司から注意を受けたり、居眠りをしたようなこともない。もっとも、昭和五四年八月一〇日ころ、彫刻作業に従事中の原告が、佐藤班長から作業能率が悪いとして注意を受けたことはあるが、それはプラスチックの切断面がギザギザで使えなかったことによるもので、同班長も原告からその旨の説明を受けて了解したものである。原告は、同年九月一七日当時、脊髄変形症で中腰の作業に耐えられなくなり、その旨の診断書を会社に提出してボルトのペト塗り、シールド線の芯入れ等の作業に変えてもらっていたものであり、右作業は本来は中堅男子労働者にふさわしくないものではあるが、原告はペト塗り方法を工夫するなどして一生懸命やっていたものである。その後原告は、腰の状態が回復したので、上司にペト塗り作業から外してくれるよう申し入れたところ、パート作業室に呼ばれて上司に詰問されたようなことがあった。また、原告が上司に不良部品の組替えを指示された時は、責任の所在を云々せず速やかに指示に従ったし、原告がヘリウムテストの手順や治具につき上司に質問し、ノートにしてないのかと問われたことはあるが、原告が重ねて聞いたのは前に説明を受けていなかった事項についてで、上司もこの間の事情を聞いて了解したものである。上司が就業規則を取り出して注意したのは、右の機会とは別のことである。

(3) 原告が上司から製品損壊があったと聞かされたのは一回だけで、一時に一〇台位壊されたという内容であった。

(4) 原告が同僚の吉見からプラグが緩んでいるのではないかと言われたことはあるが、プラグが緩んでいるとエアが洩り、組立の工程まで行く前に発見されるので、そのようなことはないと思う旨を静かに述べ、大塚班長も右製品を確認したが異常はなく、その後右の件で原告が何らかの連絡を受けるようなこともなかった。また、原告は、上司に窓をつけてほしいと要求したことはあるが、くってかかったり、他の従業員の作業を妨害したようなことはない。

(5) 原告が清水係長から製品損壊事件を聞いたのは、前記のように一回限りで、六月二五日の損壊事件及びその後の社内巡回の実施のことは全く知らなかった。

2  被告の主張2はすべて争う。

(1) 被告主張の日に原告のグリス塗布をめぐり多少のトラブルが生じたことはあるが、それは原告が大塚班長と大谷主任からグリス塗布の要否につき正反対の指示を受けたことに端を発するもので、その点のくい違いは右両者間の話し合いで解決しており、その際、上司から注意されていた原告を年下の同僚がからかったので、原告は右同僚に多少強く言い返したにすぎない。

(2) 被告主張のように原告が上司にくってかかったり、上司を難詰、威嚇したり、トルクレンチで荷台を叩いたりしたようなことは全くない。

3  被告の主張3の事実中、原告が被告主張のとおりセコニックメーター二台の透明プラスチック表示部分を損壊したこと、そのため原告は被告会社から自宅待機を命ぜられたことは認めるが、その余の点はすべて争う。原告が会社製品損壊行為に及んだのは、職場における日頃の冷遇によりうっ積した欲求不満が爆発し、腹立ち紛れに靴のつま先でメーターのカバーを叩いたものであり、呼び止められた原告は、素直に事実を認め、以後上司の指示に従って行動し、当日の被告会社の事情聴取にも応じて素直に事実を認めている。被告会社は、以前の損壊事件も原告の行為と決めつけ、矢継早に原告を追及したが、原告は、以前の件は覚えがないので否定したものにすぎず、見つからないものを自分から進んで認めるわけがないなどと発言するはずがない。

4  被告の主張4は争う。原告がカバー部分を損壊したセコニックメーターは、振動、傾斜、衝撃等に対する性能がよく、被告会社もそれを売り物にして宣伝しているものである。原告が現実に損壊したのはセコニックメーターのカバー部分だけで、メーター自体はカバーを損壊した後も作動していたものである。

三  証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録の記載と同一であるから、これを引用する。

理由

一  被告がその主張のような会社であり、原告が昭和三二年五月一日被告会社に雇用され、工業計器及びその部品の調整、組立等の業務に従事してきたこと、被告会社が原告に対し、昭和五六年八月四日、原告に就業規則五六条六号(会社の業務に協力せず業務の遂行を妨げたとき)、七号(故意または重大な過失により会社に損害を与えたとき)、八号(上司の命令に不当に反抗したとき)該当の懲戒解雇事由ありとして原告を懲戒解雇する旨の意思表示をしたこと、原告の本件解雇時における賃金についての定めが原告主張のとおりであったことはいずれも当事者間に争いがない。

二  (証拠略)を総合すると、次の事実が認められる。

(一)  本件懲戒解雇に至る経緯

1  原告は、昭和四九年当時被告会社の製造部製造課組立係員として、その製品であるNDP(差圧発信器)の調整等の業務に従事していたが、そのころ、流れ作業、共同作業が多く、チームワークを要する組付作業をさせたところ、標準時間内に組付ができなかったり、作業面でのトラブルが多かったりしたので、単独作業のできる調整作業をさせざるを得ないような状態であった。しかも、右NDPの調整についても、普通の従業員が七台位調整するところ、原告は二、三台しかできず、原告の調整したものは、他の従業員が再度確認をしなければならないような状況だった。しかるところ、昭和五一年五月ころから七月初旬ころにかけて、原告に職場内における異状な言動がみられるようになった。即ち、会社から作業中安全靴の着用を指示されているのに、これを無視して床に新聞紙を敷き素足で調整作業を行い、上司に注意を受けても水虫を直すために必要とのことでこれを聞き入れなかったり、同僚が朝の挨拶をすると、「うるせえ、俺は忙しいから話しかけるな。」と答えたり、通勤用の自動車をクラクションを鳴らし放しで一時停止もせずに運転したり、仕事上重要な伝票を屑籠に捨ててしまったりし、上司が再三にわたり注意をすると、大声で怒鳴ったり、上司を睨みつけたりするようになった。そこで、被告会社は、この間の事情を原告の家族方を訪れて説明したところ、原告の家族から原告を暫く休養させたい旨の申し入れを受けたので、同年七月七日から原告を長期病気欠勤扱いにすることとした。

2  原告は、昭和五二年一月五日、再度出社して差圧発信器の調整業務に当たることになったが、作業中居眠りが多く、その都度上司が注意をすると、原告は「下を向いていた。眠っていない。」と反抗的態度で答え、反省の態度を示すようなことはなかった。また、原告は、同年五月ころから得意先記号の彫刻作業に従事することになったが(これは係の仕事中最も簡単な仕事であった。)、その作業能率は、標準作業枚数が一日約二六〇枚のところ、一日七、八〇枚位しか処理せず、昭和五四年四月一日に入社した女子社員の一日の作業枚数一四〇枚にも遠く及ばないような状況であった。そこで、上司が原告に対し、せめて一日に一四〇枚は処理するよう注意すると、原告は、「そんなにあおってもできないものはできない。」と開き直って答える始末であった。作業中の居眠りは、依然として続いていた。

原告は、昭和五五年四月一五日、上司からボルト亜鉛ペト塗り作業を依頼されたが、「俺は二二年も勤めているのに職級が上らない。仕事なんか適当にやればいい。力は半分出せば十分だ。」と発言し、容易に作業に着手しようとしなかった。

また、原告は、同年一〇月二日、検査係から原告の組付け作業ミスの指摘を受けた上司から不良部分の組み直しを指示されたところ、自分がやったのではないと強弁してこれに応じようとしなかった。

更に、原告は、昭和五六年三月二七日、電子ビーム溶接室におけるヘリウムテストに従事中、テストのたびに手順や治具につき何回も他の従業員に聞きに行き、右従業員から作業が妨げられるとの苦情を受けた上司から使用方法等をノートにとるように指示されるや、「一回聞けば覚えるからノートは必要ない。」などと言って上司に反抗した。そこで、上司は、就業規則の服務に関する条項を示して上司の指示命令に従わなければならない旨注意したが、原告はこれに従わず、相変らず他の従業員に作業方法を聞き続けた。

3  昭和五六年四月一四日、被告会社において、会社製品であるKDIセコニックメーター二台の電流指示計プラスチックカバーが何者かの手によって損壊されるという事件が発生し、次いで、同年五月八日、同様の会社製品損壊事件が発生した。被告会社は、製品の損壊状況等から右事件は何者かの故意による事件と判断したので、同月一二日、各係ごとのミーティングを開き、右損壊事件の概要を説明するとともに、再発防止のため不審者を見かけたら知らせるよう呼びかけ、また、同月一八日の各班ごとのミーティングにおいても、会社製品損壊事件を取り上げた。原告は、右二つのミーティングにいずれも出席していた。

4  昭和五六年六月初めころ、原告が組付けたプラグが緩んでいることに気付いた同僚が原告に注意をしたところ、原告は激昂し、右同僚に詰め寄るという事件があった。また、原告は、同月一七日の就業時間中、突如原告がヘリウムテストをしていた場所の壁に窓を作ってほしい旨上司に申し入れ、上司がビーム室には窓が三つ、冷房吹出口が三つ、扇風機が一台あるうえ、壁の反対側には自動販売器が置いてあることなどから、直ちに右要求には応じかねる旨種々説得を加えたものの、容易に納得せずに自己の要求を繰り返し、そのため付近で作業中の他の従業員の作業が約二時間にわたり中断させられた。

5  昭和五六年六月一八日、被告会社において、第三事務所出入口付近に置いてあった三台の現場型指示調節計の指針が何者かにより折り曲げられ、また、配管用ゴムチューブが切断され、スケール板が凹まされるという第三回目の製品損壊事件が発生し、次いで、翌一九日、前日損壊された現場型指示調節計のベローズ部分に何者かによって穴があけられるという第四回目の製品損壊事件が発生した。右損壊事件は、作業中の過失に基づく事故ではなく、計器のドアを開けて故意に損壊しなければできない傷であったところから、被告会社は故意による製品損壊事件と判断し、職場内において右事件は労使双方の手になる生産性共同宣言に対する挑戦行為であるとの怒りの声が上がったこともあって、被告会社としては、相次ぐ会社製品損壊事件を重要視せざるを得ないこととなった。そこで、被告会社は、同月二三日朝のミーティングにおいて全従業員に対し、第三、四回損壊事件によって損壊された計器を示したうえ、損壊事件再発防止のため従業員の注意を喚起した。原告は、同日の職場におけるミーティングにも出席して一番前で話を聞いていた。

6  同月二五日、第三総合工場内の検査係のカウンター上に置かれてあった差圧発信器のダイヤフラムに穴が三か所あけられ、中の封入液が洩出させられるという第五回目の製品損壊事件が発生した。右事件においては、保護カバーを外して損傷を加え、しかるのち再び保護カバーが取りつけられてあった。

以上のようなことから、被告会社は、相次ぐ会社製品損壊事件の犯人は会社内部の者で、犯行時刻は従業員が残業をしている時間及びガードマンが巡回している時間を除く早朝と推定し、その時間帯に従業員による社内巡視を実施することとして、翌二六日から右巡視を行った。

(二)  原告の上司に対する反抗、職場秩序破壊行為

1  原告は、昭和五六年六月二二日、ND22(差圧発信器)の標準ボディ組付作業中、原告が禁油ボディのプラグにグリスを塗って組付けているのを見た他の従業員が原告を注意したところ、通い箱内のボディ及び荷札に禁油と書かれていて右の注意は至極当然のことであったのに、これに腹を立て、大声で「そんなことは聞いていない」とくってかかり、その間付近の従業員の作業を中断させた。

2  また、原告は、同年七月六日、KDIセンターボディ組付作業でヘリウムテストを実施中、上司に作業変更を命じられたところ、「作業変更の理由がおかしい、作業の指示が悪い。」と上司に罵声を浴びせるなどして反抗し、上司が変更理由を説明したにもかかわらず大声をあげて反抗し、右命令に従わなかった。そのため、原告は、上司に就業規則の服務についての条項を読み聞かされて厳重な注意を受けたが、そのような混乱の続く間、付近の作業が妨害された。

3  更に、原告は、同月八日、作業中上司にインパクトレンチの使用を許されなかったことに腹を立て、「どうして俺には使わせないのだ。」と上司を大声で怒鳴りつけるなどし、これを聞きその場をおさめようと集った他の上司らに対しても、「お前は関係ないからどいていろ。」などと怒鳴りちらし、更に、トルクレンチで荷台を五、六回叩き、通箱を床に投げつけるなどし、その間付近の作業が妨害された。

(三)  原告のメーター損壊行為

原告は、前記のように被告会社内における製品損壊事件が続発し、従業員による社内巡回が行われていた昭和五六年七月一三日午前七時一〇分ころ、被告会社の製品であるセコニックメーター二台を故意に蹴飛ばし、表示部分の透明プラスチックを損壊した(この事実は当事者間に争いがない。)。即ち、前同日時ころ、社内巡視をしていた被告会社の製造課員二名は、第三事務所ドリフトテスト室内で、物の割れる音を聞き、現場に駆けつけてみると、セコニックメーター二台の透明プラスチック表示部分が損壊されており、原告が現場から立ち去るのを目撃した。そこで、右両名は、原告のあとを追いかけ、原告に「壊したな。」と言うと、原告は「やったよ。」と答え、右損壊が自己の行為によるものであることを認めた。右両名が原告に損壊行為に及んだ原因を尋ねると、原告は、「面白くねえからやったよ。」と答えた。そこで、被告会社は、同日午前一一時ころから約四〇分間、北村次長以下関係者が原告から事情聴取を行ったが、その席上原告は、胸を張り、肩をいからせて事実を認め、損壊行為に及んだ原因を尋ねられると、「日頃面白くないから。」と答え、反省しているかと問われると、「そんなことは分らない。」と答えた。そして、原告に反省の色がないと指摘されると、「反省の色とはどんな色」と嘯き、右以外の損壊事件の関与の有無を尋ねられると、「誰かが見ていなければ自分から言うわけがない。」と答えた。

(四)  被告会社における本件処分の決定

その後、被告会社は、原告の処遇につき検討を加えた結果、以下のような理由から原告を懲戒解雇することもやむを得ないものと判断した。即ち、被告会社は、<1>企業内で意図的に行われた原告の製品損壊行為は、品質管理の重視される産業界において、それ自体として会社の信用失墜につながりかねないこと、<2>本件セコニックメーターは、KDI11及びKDI23(差圧発信器)に備えつけられ、石油化学プラントのアセチレンガスの圧力指示調節及び石油プラントの流量指示発信器として使用される予定であったが、圧力検出半導体センサー及び高集積度プリント板上の電子部品に強い衝撃が加わると、電気的、機械的に損傷を受け、これをそのまま出荷して稼動させると、制御グループに異常な外乱を与え、アセチレンガスのパイプラインや各種機器からの漏出による引火、爆発のおそれ、エチレンの混合比が変ることによる不良製品ができるおそれ、圧力上昇によりアラームが出て原因究明に手間取り、系が乱れて生産上多大な支障を受けるおそれ、製造量異常記録による生産管理上重大な支障を受けるおそれがあり、被告会社の対外的信用を害するおそれが十分あったこと、<3>そのため、被告会社は、万全を期してセコニックメーターを交換し、再度慎重な機能テストを行ったうえで出荷せざるを得なかったこと、<4>本件においては、幸い実目盛盤の損傷までには至らなかったが、原告の行為は右損傷に至りかねないもので、特注手配を要する実目盛盤に損傷が及んだ場合には、大幅な製品の納期遅れを招くことは必至で、会社の信用失墜につながりかねないものであったこと、<5>原告の本件製品損壊行為は、昭和五六年四月一四日以降被告会社内で製品損壊事件が頻発し、会社をあげて再発防止に努力している最中にこれに挑戦するかのように敢行されたもので、それは会社の品質管理体制に対する挑戦行為であるのみならず、企業の社会的責任を宣言した昭和五三年六月の「生産性労使共同宣言」に対する挑戦行為でもあり、しかも原告は、右のような会社の状況を熟知しながら、面白くないという単純な動機から故意に損壊行為に及んだものであること、<6>原告は、損壊行為後も真摯な反省の態度は全く見せず、再び損壊行為にも及びかねないような言動さえ示していたこと、<7>原告の作業能率は常に低く、上司の命令に従わないのみならず、大声でくってかかるなど反抗的態度に終始し、同僚に対してはたびたび喧噪行為に及ぶなど原告の勤務成績は著しく劣り、これによってもたらされる職場環境・秩序の乱れ、職場における士気の低下、作業妨害等は無視できないものであったこと、<8>しかも、右のような状況は、会社側のたび重る厳重注意にもかかわらず一向に改善されないのみならず、その喧噪行為等は次第に激しくなり、職場の上司、同僚からは原告の配転を強く希望する訴えが頻発していたが、原告の能力等の関係からそれもできず、また、原告に反省心や意欲が見られないところから企業内で右の点を改善することは著しく困難な状況にあったことなどの点を考慮し、職場の危機状況を救済し、企業の存続を図るためには原告を懲戒解雇することもやむを得ないものと判断した。そこで、被告会社は、原告が所属していた全国金属労働組合東京地方本部山武支部の同意を得たうえ、昭和五六年七月二一日、原告の弁解に対し被告会社の考えを再度説明するなどし、同年八月四日、原告を懲戒解雇するに至ったものである。

以上の事実が認められ、これに反する原告本人尋問の結果は前掲各証拠に照らし信用することができず、他に右認定を左右するに足るだけの証拠はない。

三  右の事実によれば、原告のなした前記二記載の上司に対する反抗、職場秩序破壊行為は、就業規則五六条六号(会社の業務に協力せず業務の遂行を妨げたとき)、八号(上司の命令に不当に反抗したとき)に、メーター損壊行為は、同条七号(故意または重大な過失により会社に損害を与えたとき)に該当し、被告会社の原告に対する本件懲戒解雇が、就業規則該当事由がないのになされたものであるとか、懲戒解雇を相当とするような事由がないのになされた権利の濫用にわたるものであると認めることはできないものである。

もっとも、前掲の各証拠によれば、原告が損壊したのは二台のセコニックメーターのプラスチックカバー部分だけで、右メーターの価額は一個金二二〇〇円位にすぎず、原告は入社以来本件処分までの二〇余年間、全く懲戒処分を受けたことがないことが認められ、これらの点からすると、原告に対し懲戒解雇処分をもって臨むのはいささか酷に失するかの如く思われないでもない。しかし、被告会社は、これまで原告を懲戒処分にはしなかったものの、原告に問題行動がある都度上司らが注意を与え、家族と連絡をとって対応策を協議するなど、何とか職場に適応させようと努力してきたものであること、それにもかかわらず、原告の上司に対する反抗、職場秩序破壊行為は長期間反覆継続され、しかもその内容は次第に悪質化しつつあったこと、原告の右行為による職場秩序の乱れ、士気の低下、作業妨害等は無視できない程度に達していたこと、原告の本件メーター損壊行為は、被告会社が相次ぐ製品損壊事件の再発防止にやっきになって取り組んでいる最中に、この間の事情を熟知しながら故意に敢行された事件で、会社に対する挑戦行為とも目すべきものであり、これによる企業秩序の乱れ、即ち、会社の被った損害は無視できないものがあったこと、しかも原告は、自己の行為につき反省の態度を示さず、再度の破壊行為さえしかねないような言動を示していたことは前記のとおりであり、これらの事情をも合わせ考えると、原告に対する本件懲戒解雇はまことにやむを得ない措置というほかなく、右処分が権利の濫用であると認めることはできない。

したがって、被告会社のした本件懲戒解雇は有効で、原、被告間の雇用契約関係は昭和五六年八月四日限り消滅したものというほかなく、同日以降も原、被告間に右契約関係が存続していることを前提とする原告の本訴請求はいずれも理由がない。

四  よって、原告の本訴請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 山下満)

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